「のさり」は熊本県の天草地方の方言で、「良いことも悪いことも自分の境遇に起こったことは否定せずに受け入れる」というような意味だそうです。
若い男がオレオレ詐欺をしながら流れてきて、船で天草に渡り、ここでもオレオレ詐欺を働きます。
ばあちゃんは電話がかかってきた瞬間、オレオレ詐欺とわかったはず。(ネタバレになるので理由は秘密)
オレオレ詐欺とは分かっていたけど、相手は自分に「ばあちゃん」と言ってやってきた。
ならばこの人のことを「孫」ってことで「のさります(受け入れます)」という感じかな。
「詐欺」も受け入れているので、多少のお金を取られても、のさります。
男は騙しにやってきたけれど、ばあちゃんは騙されていないし、「孫という虚構」だけではなく「詐欺」まで受け入れているから、ああいう感じになったのかな。
孫といいつつ必要以上にベタベタすることはなく、ばあちゃんが掴み所がない雰囲気なのは、ばあちゃんがなにもかもわかった上でのさっていたから。
男の視点から見ていると不思議な気持になるけれど、それはのさる(受け入れる)こと自体が「ありえない」と思っているから。
「のさります」「のさられる(受け入れられる)はずがない」と、逆の前提で感じ、考えている。
それでも二人が共に日々を過ごせていけたのは、お互い「孫という虚構」を受け入れたから。
男も否定することをやめ、のさったんだなぁ。
のさりがのさりを生んでいく。
のさりの輪で、のさりの島で、最初荒んだ様子や振る舞いだった男がだんだん柔らかい表情になって、素直さや優しさを取り戻していくところがすごくよかったです!
最後は実の息子より優しかった(ポロッ)
のさりのパワーは絶大です!